2020年の再挑戦
「我々の来訪は、これが二度目だ」
第18話「2020年の再挑戦」
脚本:継田淳 監督:辻本貴則
あらすじ
怪獣が消え去る不思議な事件が起こった。調査するハルキが出会ったのは、古い観覧車を見つめる謎の女性・カオリ。さらに街では人々の失踪事件が相次ぐ……。果たして事件の真相は、そしてカオリの正体とは!?
感想
本作はウルトラQ第19話「2020年の挑戦」の続編である。
1966年にケムール人はXチャンネル光波で倒されたが、その誘拐計画は成功していた。
カオリの肉体の合成手術は失敗したようだがどうやら普通は合成が成功するようである。
つまり誘拐された人間の多くはケムール人の肉体として生きていることになる。
背筋が凍りついた。
そして今回は転送液(ナノマシンという説もある)を詰めた爆弾という大規模な作戦になっている。
観覧車はハルキとカオリの思い出の場所であり、ケムール人の計画遂行のカウントダウンの時計としての役割もある。
「あの音楽」とともにまるで54年前に時を戻したように観覧車が動き出す演出は美しくも怖い。
転送液がかかった監視カメラが消えるなど面白い演出が多かった。
ここで「ゴジラvsビオランテ」を思いだしたのは私だけではないはず(めちゃ感動するシーンなのに笑ってしまった私を殴りたい!)
辻本監督は第5話「ファースト・ジャグリング」のペギラの凄まじい強さや無重力現象、ジェット噴射で氷を溶かすセブンガーなど良い演出をする監督で、個人的には田口監督よりも信頼している。
(ただ同話は中野貴雄脚本ゆえに稚拙な台詞回しが多く、ジャグラーも抱き合わせていて構成に難があり、決して面白い回ではないし、タイガの「タッコングは謎だ」はとても見れたものではない)
曰く付きの剣「ベリアロク」もグリーザとの戦い以上に役立っていたような気がする。
話が少し逸れるがヘビクラ隊長の正体はジャグラス・ジャグラーである。
私はジャグラーが嫌いだった。
なぜならジャグラーは「オーブ」本編では非常に迷惑なホモストーカーで怪獣をけしかけてくるクソッタレな野郎だったからだ。
しかし前日談「ORIGIN SAGA」や「劇場版ジード つなぐぜ!願い」ではスカした嫌な奴ではあるがちゃんと正義の味方だった。
元々はO-50星出身でガイ(ウルトラマンオーブ)をサポートする戦士で剣の実力はガイ以上。
ミコットという女性を亡くしてしまい闇堕ち(?)して魔人になってしまったが、別に闇落ちして以降も普通にベゼルブ討伐に尽力していたはため、今思えばオーブ本編のジャグラーがおかしくなっていただけなのだろう。
「ORIGIN SAGA」ではダイナやコスモスの無能っぷりに絶望したり自分より実力が低いガイがウルトラマンに選ばれたせいでコンプレックスに苦しんでいたが、ストレイジ結成も「ウルトラマンに頼らず星を守りたい」という元々の正義感にコンプレックスが加わったものだと言える。
それでもオーブ自体の悪行がちらついて「正義に目覚めたんだよ」と胡散臭い事を言っていたが私は全く信じていなかった。
だが今回の事件後にユカから一平くんや宇田川刑事の事を聞かされると
「勇敢なる先人たちだ…」
と心から尊敬している様子の発言。
私はここで涙が溢れてしまった。このセリフは前例のない「テレビ映画」をやろうとしたウルトラQスタッフへの賛辞とも受け取れる。
そして前述のウルトラマンコンプもあって本気で感動しているように見えた。
私は今までの「Z」内でのジャグラーの善行の積み重ねと今回の発言で彼を許しました。
貴方は立派な隊長です。これからもこの地球を守ってください。
ラストシーンのカオリは「昨夜の記憶が無い」と言っていたが、私はこれをハルキを心配させないための優しい嘘だと解釈している。
なぜなら全部覚えているから。
ケムール人に誘拐され意識のあるまま54年間利用された辛い記憶があっても、その54年の欠落を埋めてくれるハルキという友達ができた。
カオリはきっと強く生きていけると思う。
ありがとう、それしか言う言葉が見つからない…
2020年に一番やって欲しいこと。
2020年に一番やるべきこと。
二週間連続で怪獣にトドメ刺せないハルキのヘタレぶりを見た時は本気で視聴を切ろうかと思っていたけど観続けて本当に良かった
余談
カオリを演じたのは宇田川かをりさん
この宇田川という苗字で察しがいい人は気づいたかもしれない
「2020年の挑戦」の老刑事の名前も宇田川である。媚びた役者ネタは嫌いだけどこういうさりげないオマージュネタなら許せるし、好きです
あ、パゴスはまた出してね
タイガの酷い扱いは忘れてないぞ!